第6話「その夢の向こう」
<その日は絶好の秋晴れだった。私はシモンの案内で”奇跡発見”の取材へと向かっていた…はずだった>
『そろそろ目的地を教えてくれてもいいんじゃない?シモン』
『そんなに知りたい?』
『そりゃあ。だってあなた言ったでしょ?神秘的な場所があるって。だから私こうして気合い入れて…』
『まさか嘘だったの!?』
『あぁ…うん。説明させてくれる?』
『君は最近 次々と注目の企画を発表して会社は今や上り調子だ』
『おかげさまで』
『複数の番組制作と社長としての業務を並行し多忙を極めている』
『ここが頑張り時だもの』
『ただ1つ問題がある。君は気付いていないようだけど君の会社の優秀で頼りになる社員たちの目は誤魔化せない』
『君のことを相談されたんだ。”頑張ってくれるのは嬉しいけど倒れないか心配だ”ってね』
『もう、みんな心配しすぎなんだから』
『適度な休息を取ることも経営者には必要だよ。大事な決断をする時に能が十分にパフォーマンスを発揮できなければ』
『というわけだから今日1日 僕とピクニックに行ってくれないかな?そしたら彼女たちも安心するし 僕もいい休日を過ごせると思うんだけど』
『分かった。じゃあ今日だけは仕事を忘れて楽しむ。ありがとうシモン』
『まぁでも神秘的な場所には違いないんだ。これから行くのは特別な景色の見られる場所だから』
<この美しい景色の先に待つものが何なのか この時シモンだけが知っていた。けれど彼もあんなことが起こるとは予想していなかっただろう>
<この世界には特殊な能力EVOLを持つ者が極少数ながら存在する。こえは己が運命に抗い 世界と戦うEvolverたちの物語である>
『目的地はまだ先でしょ?本当にここで降りてよかったの?』
『天気も良かったし 少し歩いて行こう。景色が見たかったんだろう?』
『最初は他の10万匹のキツネと同じただのキツネだった。でもそれから僕たちは友達になって、今ではこの世で1匹だけのかけがえのないキツネなんだ』
『星の王子さまだね。麦の金色が君のことを思い出させてくれるんだ。そうして麦畑を渡る風の音を僕は愛するようになるんだろう』
『ねぇ見て見て』
『ん?』
『ほらあの辺りにキツネが座っていそうじゃない?』
『あっ』
『どうしたの?』
『怪我してうまく歩けないみたい』
『野良ではないね。子猫なら行動範囲もそう広くない』
『飼い主を探さないと』
『待ってて。お家に連れてってあげるから』
『シモンこの子をお願い。私ちょっとあそこの人に聞いてくる』
『あのー!すみませーん!』
『まぁありがとう。親切な人に助けてもらってよかったわねミーちゃん』
『さぁどうぞ上がって。今 お茶を淹れるわね』
『あの、お気遣いなく』
『遠慮しないで。ほら』
『綺麗…』
『ふふっ、ありがとう』
『これ全部手作りなんですか?』
『えぇ。そうだ お礼に何かプレゼントするわね』
『いえそんな。こんなに素敵な物をタダで頂くわけには…』
『これは…』
『御守りよ。あなたに幸運が訪れますようにって』
『あの、よかったら作り方教えてもらえませんか?』
『もちろんよ。どれがいいかしらねぇ?』
『あの、できれば一番簡単なのが…』
『あー!もう一回!』
『聞いたよ。母校で取材中にトラブルに遭ったんだって?』
『そんなことまで』
『どうやらまた随分と危険なことを調べているみたいだね。君のことだからきっと一生懸命に真実を追い求めていたんだろう』
『でも真実を知ることが必ずしも幸せかどうかは分からない』
『あっ…』
『危険な目に遭ったり 知らなければよかったと後悔することだってあるかもしれない』
『ありがとうシモン。心配してくれて』
『ただ私はそうは思わないかな。確かに危険なこともあるかもしれない。けど知らないままでいるよりずっといいよ』
『だってどんなに残酷な真実でも知らなきゃ乗り越えられないでしょ?』
『それじゃいつまで経っても何も変わらない。前にも進めない。そんなの嫌だから』
『苦しんでいるEvolverがいるなら助けたい。パパみたいな被害者をこれ以上出したくない。ブラックスワンを止めたいの』
『うっ…!』
『あー!また失敗!』
『貸して。ほどいてあげる』
『いい!自分でやるから』
『そう?じゃあごゆっくり』
『がんばる!』
(僕の前では無理しないでゆっくり大人になればいいよ)
『ショウ、お前なのか?俺をこんな所へ呼び出したのは』
『アンタに忠告があってな』
『ブラックスワンから伝言だ。命が惜しければこれ以上邪魔をするなとさ』
『お前まさかブラックスワンに…!?』
『勘違いするな。仲間になったわけじゃない。ヤツらには利用価値がある。見返りに引き受けてやっただけだ』
『彼女には手を出すな!』
『少し遊び足りないが今日はこの辺にしておくか。アンタに大事なものが守れるとは思わねぇが。まぁでも本気であの子を守りたいならあんな所はとっとと辞めるんだな』
『どういうことだ?』
『自分が捕らえた連中がどうなってるか知らないのか?保護だの犯罪抑止だの御託を並べたところで対策局のやってることはただの死刑執行人だろうが』
『アンタもせいぜい気を付けろよ。処刑されないように』
『できた!』
『おめでとう。お疲れ様。力作だね』
『うん』
『シモンはいこれ。プレゼント』
『えっ?』
『今さらだけど”奇跡発見”に協力してくれてありがとう。シモンが出演してくれなかったら番組は続けられなかった』
『最初に会った時 私の色を見せて欲しいって言ってくれたでしょ?』
『今思うとあれが最初のきっかけだった。あなたが背中を押してくれたの』
『これはその感謝の気持ち。よかったら御守りにして』
『それじゃ君はこのためにあんなに何回も何回もやり直して…』
『うん。まぁあんまり出来は良くないけど…』
『確かに上手いとは言い難いね。でも僕は好きだよ』
『嬉しいよ。ありがとう』
『本当に綺麗!ねぇシモンが言っていた特別な景色ってここのこと!?』
『いや』
『わぁー!すごい!』
『ここ覚えてる?』
『えっ?』
(なんで…急に眠く…)
『思い出せるよきっと。君の求めていた真実を』
(瓶の中に閉じ込めたあの日の約束を)
『あれ?私…寝てた?』
『さっきより一回り小さいような…。気のせい?』
『あの子…』
『こんにちは!』
『こんにちは』
『お兄ちゃん絵を描きに来たの?』
『うん。毎日ここで描いてるから』
『見せて見せて!』
『すごい…』
『すごーい!私 お兄ちゃんの絵大好き!』
『君いくつ?名前は?』
『えっとね もうすぐ5歳!あ、名前も書けるようになったんだよ!ほら!』
『お兄ちゃんの名前は?』
『僕はシモン』
『シモン?』
『思い出した?』
『ねぇ待って。どういうこと?あの子たちは一体…』
『変なの…。なんだか懐かしいような…見たことがあるような気もして…。それにあの子シモンと同じ名前だって…』
『できた!はいこれあげる!』
『ちょっと曲がっちゃったけど』
『ありがとう』
『お兄ちゃん明日も来る?』
『うん』
『やったー!』
『でもこの約束は…』
『な、なに?』
『こんにちは』
『こんにちは。男の子を待ってるの?』
『うん。昨日のお兄ちゃん』
『明日も来るって言ってたもんね』
『でも来ないと思う』
『えっ?どうして?』
『私、明日のことが見えるの』
『えっ?』
『今日のこともね見えたんだ。いつまで待ってもお兄ちゃんは来なくて 私はずっと1人で鶴を折ってるの』
『私の夢は当たるんだよ。お姉さんもそうでしょ?』
『だからもうすぐ目が覚めるよ』
『何…何を言ってるの?』
『お兄さんはもうすぐいなくなって戻ってこないよ』
『えっ?』
『ここは…』
『危ない!』
『まだ生きてる!』
『シモン…』
『大丈夫?』
『シモン…今の…』
『眠っていたんだよ。ずっとここで』
『えっ?』
『思った以上に疲れているみたいだね。家に帰ってゆっくり休んだ方がいい』
『ちょっと待って。私 雨で事故を見て…でもあの子は…』
『夢を見たんだ』
『シモン…』
『ごめん。悪いけど送っていけない』
(そんな…だってあれは…。さっきのは全部夢だったの?)
『クイーンの覚醒に失敗したそうだなアレス。”人は他者との関係性において進化する”というのがお前の理論だったな』
『人類は社会性を備え 共同体を形成し進化してきた。それは純然たる事実だ。利用しない手はない』
『まぁいい。その理論が正しいかどうかはすぐに証明される。時は来た』
(真実がどんなに残酷だったとしてもクイーンは全力で前へ進もうとしている。我々の思惑通り、いやそれ以上の早さで)
(計画では彼女をまず夢の世界に誘い込んで記憶を呼び覚ますはずだった。完全な覚醒にこそ至らなかったが確実にその能力は開花しつつある。だから制御できなかったのか)
(初めて彼女をコントロールできないと思った。その結果あんな夢を…)
(あの事故で両親は亡くなり、1人生き残った少年は)
(組織の手によって人類初の人造Evolverとなった)
(そしてその副作用で感情と色を失ったはずだった)
『麦の金色が君のことを思い出させてくれるんだ』
『そして麦畑を渡る風の音を僕は…』
(夢で見た男の子がシモンだとしたらずっと1人で生きてきたのかな?)
<お兄さんはもうすぐいなくなって戻ってこないよ>
『もしかして今度はシモンが何か危険な目に…』
(シモンもEvolver。巻き込まれる可能性だって…)
(ブラックスワンが何を企んでいるのか分からないけどそんなことはさせない)
『おはよう』
『社長!だだ、大ニュース!』
『ちょ、ちょっとユイちゃん。アンナさん一体何の騒ぎ?』
『舞い込んだのよ。すっごいビッグチャンスが』
『ビッグチャンス?』
『あのHBSが世界各国でゲームバラエティー番組を制作するんだけど、初回の舞台が恋花市なんですって!それでウチに業務提携を持ちかけてきたの!』
『えっ!?HBSってあのHBS!?バラエティー視聴率 全米トップのアメリカ大手のテレビ会社じゃ…』
『だから大ニュースなんですよ!』
『例のKey独占インタビューがアメリカでも相当話題になったみたい。先方はプロデューサーにあなたをご指名よ』
『嘘!?信じられない!』
『”誰もが注目する各界の大物ゲストを迎えた画期的なゲームバラエティー番組。その記念すべき初回ゲストは彗星のごとく現れ一大グループを築き上げた経済界の若きプリンス、時代の寵児…”』
『”今もっとも話題の人物ファーレイCEO”!?』
<私の心を蝕む忌まわしい場所>
<確固たる思いを成し遂げるためには不安など拭い去る>
<第7話”繋がった記憶”>
つぶやきボタン…
まさかシモンさんがブラックスワン側の人間だったなんてね
確かに少し怪しい感じはしていたけどこんな近くにいるとは意外で
でも、だからといって何か危害を加えるわけでもないしいい人っぽい気も
小さい方のわたしちゃんが言うには、当分戻ってこないようだけど果たして
仕事が順調にいってる一方でどんどん不穏な雰囲気になってるのがね…
次回はゼンさんがメインの回みたいだけど2人とも大丈夫かなぁ?
確かに少し怪しい感じはしていたけどこんな近くにいるとは意外で
でも、だからといって何か危害を加えるわけでもないしいい人っぽい気も
小さい方のわたしちゃんが言うには、当分戻ってこないようだけど果たして
仕事が順調にいってる一方でどんどん不穏な雰囲気になってるのがね…
次回はゼンさんがメインの回みたいだけど2人とも大丈夫かなぁ?
恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~ 6話 感想
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シモン:平川大輔
movic
2020-10-30
コメント…2020年夏アニメについて
-
- 2020年08月28日 09:31
- ID:BAGwn.0d0 >>返信コメ
- 色覚を失って、ある特定の条件で色が見えるのは、「色づく世界の明日から」を思い出す。
結構ストーリーは面白いし、ヒロインのわたしちゃんは可愛いのに、コメント数が少ないのが残念。
-
- 2020年08月28日 09:41
- ID:K1m2jBen0 >>返信コメ
- ロリわたしちゃん可愛かったけどちょっとホラーだった
-
- 2020年08月28日 13:23
- ID:czlNWrNw0 >>返信コメ
- 過去と現在が交錯し「ちょっと頭いいっぽい?」と思ったけど「麦の金色」の件は笑った
安定のバカっぽさに一安心
-
- 2020年08月28日 20:10
- ID:FZukjW5H0 >>返信コメ
- わたしちゃんを後ろから抱き締め、手で目隠しするシモン
なんかエロい
-
- 2020年08月28日 20:16
- ID:FZukjW5H0 >>返信コメ
- 人造イボルバーって特撮っぽいな
関係ないがサイボーグ009の006と008は別にいなくてもいいような・・・
-
- 2020年08月28日 20:53
- ID:3UFxomZA0 >>返信コメ
- 国語版サブタイトルが「夢的彼岸」で始まる前から不穏すぎます
「夢、夢を見ている」6話はちょっとKanonを思い出しました
ショウ(凌肖)くん良いですね。白泉社的なキャラありだと思います
白起先輩の親戚とか?
また登場してくれると思うので楽しみです
-
- 2020年08月28日 20:56
- ID:3UFxomZA0 >>返信コメ
- 不器用なわたしちゃんが作ってたのは「平安結(ピンアンジエ)」だそうです
它可以给人们带来好运。ごく一般の幸運のお守りですね
HBSを
日本版では「全米トップ」のセリフでしたが
国語版では「全球最高的(チュェンチゥ ズイガオ ダ)」「国外最知名的電視台」で
米国とは言ってません。セリフに差が出ていて興味深いです
-
- 2020年08月29日 08:32
- ID:jd1LbJ680 >>返信コメ
- このアニメ、製作開始からOAまで一年ないと思うんだけど、作画綺麗だし、OPEDもちゃんと作ってるし、スタッフさん達頑張ってると思うわ……
今は点と点、って感じだけど4人がどう私ちゃんに絡み合ってくのか、4人揃ってブラックスワンと対峙展開になるのかクイーンとか、先は楽しみ。
で、ワンクールなのか?とふと疑問だったりした 笑
-
- 2020年08月29日 12:12
- ID:Wvnvju.60 >>返信コメ
- 子供のわたしちゃんは女王様みたいだな
あっちが本当のわたしちゃん?
-
- 2020年08月30日 15:28
- ID:Z2sFUG6q0 >>返信コメ
- うーん、動きは物足りないし、展開も若干もっさりしてるけど、ストーリー自体は案外悪くないかと。
脱力系のタイトルで見ずにスルーした人も多いんだろうなw
ここから、女王を覚醒させて世界を滅ぼす力を手に入れようとする悪の組織・ブラックスワンと、裏切り者の仮面ライダーエボルとのバトルアクションがヒートアップするのに・・w
エボルと共闘する風神ライダー、雷神ライダー、仮面ライダーDIOもよろしく。
-
- 2020年08月31日 02:36
- ID:qkCgtjt10 >>返信コメ
- 恋愛もやり、謎解きもやらなきゃいけないという事で
やっぱどうしても遅いんですよね~ストーリーの流れが…^^;
-
- 2020年08月31日 17:28
- ID:0gqgoib30 >>返信コメ
- わたしちゃんシモンと2人で出かけるなんて危機感なさすぎ!
そいつは変態ストーカーだぞ!
と思っていたらブラックスワンのメンバーじゃないか。
変態ストーカー以上にヤバい奴だった・・・
-
- 2020年08月31日 23:29
- ID:VM3rBeSN0 >>返信コメ
- 中華の臭いが嫌
-
- 2020年09月01日 01:48
- ID:qAxwSGuG0 >>返信コメ
- >>6
ピュンマは水中戦に必要だろう…
-
- 2020年09月01日 22:08
- ID:mlUCckqk0 >>返信コメ
- >>13
シモン今回で敵側って判明したけどそれとは別になんかヤバい奴感あるよね
-
- 2020年09月04日 21:55
- ID:R0TuewSL0 >>返信コメ
- >>15
007が鮫にでも変身すればよくね?
…コメントについて…
※お気軽に、どなたでも書き込みOKです。
※「>>〇」「※〇」のようにコメント番号を指定することでアンカーの指定が可能です。
※コメントの書き込みが出来ない等の不具合報告やコメント削除依頼は、コチラより一言頂けると有難いです。
※お気軽に、どなたでも書き込みOKです。
※「>>〇」「※〇」のようにコメント番号を指定することでアンカーの指定が可能です。
※コメントの書き込みが出来ない等の不具合報告やコメント削除依頼は、コチラより一言頂けると有難いです。
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それからなんだよ。特に味覚がね、だめなんだよ。
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