第6話「appassionato」
『いいじゃないか。我が天翔学園の修学旅行は…全学年、自由に行ってもいいことになってるんだから。歌唱部みんなで行けば、それだけ部の結束も高められる』

『だから、そりゃ部活動ってことだろ?修学旅行くらい、気の合うダチと行きてぇっつーの』

『ほぉう?果たして貴様と行きたがる物好きがいるのだろうかねぇ?』
『いるに決まってんだろ?』

『は?誰?それは。あん?』

『う…さ、3丁目の猫ちゃんとか…この前なんか、鳩が頭に乗ってきた…ぞ』
『ハハハ!なんだそれは』

『ブレーメンの音楽隊とでもいこうっていうの?動物以外に友達いないのか?』

『お…お前らだよ』

『だったら一緒に行こうじゃないか』

『えっ…!颯馬…!』


『よかった…これで友情が再確認できましたね』
『このくだり、去年もやってたな』




『行かねーの?修学旅行』
『うん…』

『カーチャン、さっくん、僕。カーチャン、さっくん、僕』
『って。詩もこの3人で行きたいって言ってるぜ?』
『それは…俺だって…』
『お姉ちゃん?』

『姉さんは…行って来なさいって』
『じゃ、問題ないじゃんか』
『はぁ…他にも』

『あるあるだね~』
『なに?』
『さっくんのあるあるだよ』
『生活費やら…入院費やらか…』
『なしなしだ~』

『なしなしを~、あるあるに~、ザクザクと~』
『そうだな。ザクザクと金が湧いてくれば、朔は俺たちと修学旅行へ行ける』

『あぁ!ん、ん、ん!』
『あ…そうか!俺が曲を作って詩が歌詞をつけ、朔が歌う。それをネットで売ると!』
『大判小判!ザークザクー!』
『そんなの…うまくいくの?』
『俺たちのボカロ曲はまだ売ったことないけど、お前の歌唱なら』
『一攫千金だねぇ~!』

『あぁ…じゃあ…』
『よし!まずは曲からだ!』


『完。また朝までうるさくするかも』
「あぁ、いいよ」
『わりぃな』

「いつものことじゃん?」





『あーん…』










『いいんじゃない?』


『わぁ!言葉が…じゃぶじゃぶ…降ってきた!』



「メシ食いに行こうぜ!」
「また牛丼か?」



『うまく…歌えてなかった?』

『ううん!僕の歌詞をさっくんが食べて、栄養になって、花が咲いたようだったよ?』

『詩が言うように、詩唱・歌詞の解釈。やっぱお前すげぇよ』

『だが問題は…』

『録音環境。それと…録音設備。これじゃうまく録れない』

『あ…』

『陽太くん』
『あぁ、朔くん!あのさ、朔くん修学旅行行くんでしょ?』
『はぁ…それが…』
『よかったらさ、僕たち歌唱部とも一緒に行かない?あぁそうだ!蒼介くんや詩くんも誘ってさ』
『実は…修学旅行のために、歌録りを』

『えっ、よくわからないけど朔くん歌ってるの?』
『そうなんです!でもなかなかうまく録音できなくて』
『だったら、歌唱部の部室を使ったらいいんじゃない?』
『お願いします!』

『いつでもいいぞー!』
『準備オッケーだよ!頑張って、朔くん』
『あ…はい』

『さっくーん』
『思いっきりいけ朔!すべてを出しきれ!』
『あ…あぁ』

『いつも夢は♪僕らが描いた未来の自分の理想像で♪僕の夢は叶えられましたか♪昨日の自分が問いかける♪』

『すごい…』
『ここまで伸びやかな声を出せるなんてよ』
『うん…相違ないよ』
『でしょ?』


『やったね朔くん!グッときたよ!』
『さすが猫缶食って鍛えた喉だ。まっしぐらな声だぜ!』
『逸材だね』

『実際にこの素晴らしい声を聞かせてもらったからには、僕たちにも我慢の限界がある。君が欲しい!』
『あの…それは』

『ダメだダメだダメだ!』
『神樂くんは反対か?歌唱部に入るのは』
『こんだけ朔の声が素晴らしくても、それを支えるものが貧弱すぎる!』

『それは手厳しい。我々も日々の鍛錬を怠っているわけではない。必ずや音之宮くんの声』

『神樂くんの曲』

『往田くんの歌詞を』

『表現として輝かせるべく、懸命なる精進を約束するつもりだが』

『ギターもベースもドラムも!機械の音じゃ、朔の声を引き立てることができない!』

『とりあえず生ー!生ー生ー生ー生ー!』
『それだ詩!軽音楽部から楽器を借りに行こう!』

『さっくん!いざ!生楽器~!』
『わーちょっちょっ…わぁ~!』

『すいません!今日1日、部室貸していただけませんか。あとは俺たちだけで仕上げますから』
『構わないよ』
『ありがとうございます!』
『頑張ってー!』

『なんか3人とも、楽しそうでいいですね!』









「えーいよいよ明日から夏休みに入るわけだが」

「休みだからといって気を抜いてダラダラ過ごすんじゃないぞー?」

「休みの後半には修学旅行もあるので、各自用意に怠りなく!いいな!」
「はーい」
「よっしゃー」


『なんで…』


『全然売れない…』

『少し売れてる~!』

『ふんふんふん…♪』
『これは歌唱部の連中が買ってくれたもんだよ』

『やっぱ…ボカロのほうがよかったのかな』

『そんなことねぇ!朔の声は素晴らしかった!曲だって…歌詞だって…演奏だって…俺たちは満足のいくもんを作った』

『でもね~。僕たちの曲、人見知りなんだよね~』
『人見知り?』
『さっくんと同じだね~』
『ごめん…』
『んなこと言ってる場合かよ!どうすりゃいいんだ…』

「積極的に人に話しかけることじゃないかな?」

「そして…多くの人に知ってもらう!」

『誰すか?』

「美化推進部の飯盛駆だ。君たちがここにいるって陽太から聞いてね」
『陽太くんに?』
『美化推進部がなんで』


『あ…それって』
「美化部の当番で校内を見回ってたら、この曲が聞こえてきてね。これは騒音になるか否か、一応録音させてもらったんだよ」

『海賊版~』

『ブートレグ~曲泥棒~!変なダンスして~』
「待って待って違うんだ」

「これ妹!可愛いだろ?」


「妹に聴かせたんだよこの曲」

「そしたらめちゃくちゃ気に入って!ネットでちゃんと曲買ったんだぞ」
『ありあとしたー!』
『どうも…』
「まさか君たちがうたすけだったとはね。妹があれだけ喜んでるんだ、もっと喜ばしてやりたくなってさ!」

『あの…言ってる意味が…』

「さっき君らが言ってた人見知り克服だよ。もっとたくさんの人に曲を聴いてもらうんだ。PVを作るべきだと思う」

『PV?』
『プロモーションビデオ!』

「を、作ってだね。動画投稿サイトに載せるんだ」

「インパクトのあるPVを作れば」

「必ず人は見る」

「評判が上がれば」

「曲の売り上げも上昇ってもんだ」

『でもPVって言ったって、どうやって撮ったら…俺たち素人ですよ?』
「フフン。玄人がここにいる」
『はぁ?』

「美化部の他に演劇部にも入ってるんだ。演技だけじゃなく脚本・演出も手がけるこの俺が監督をやる」

『えぇ!?』

「そしてこの作品を妹に捧げるんだ!」
『シスコン!シネコン!キツネはコンコ~ン!』

「音之宮朔くんだね。ボーカルの君が主役だ!この曲は君にかかっているんだからね」
『はあ…』





「用意!」


「スタート!」


「カーット!」

「表情が硬いなぁ。もう1回いってみよう!」

『あは…』
「カーット!カット!カーット!カットカットー!」

「仕方ないね…画像処理で何とかしよう」





「シーン3!バッチリ決めよう!用意!スタート!」

『ぼぉ~くのゆめは』

『かなえーらーれーましたーか』

『きのうのじぶんがといーかけ…るわぁっ!?』

『あ…』

「惜しいねぇ…もう一度いこう!」

『つ、次はちゃんと…』

『肩の力を抜けよ。朔』
『リラックス~さっくん!』

『あはは…』


『なみだーはいつも…』

『きぼうの…かけはしぃー!』

『カーット!ダメダメ!気持ち入ってないよー』
『NG40回目~!』

『ハマっちまったな…』

「朔くん。ここは歌詞を、朔くんの全身で伝えたいんだ。だから気持ちを入れて」

『ハァ…ハァ…』

「じゃあもう1回!」
『41回目~!』

「あぁ…待って!今日はもう無理かな。陽が落ち始めてる」
『さっくんもバイトあるしね~』

「じゃあ今日は撤収しよう!」



『いらっしゃいませ…あ…』

『さっくん~』

『あとは編集で何とかするってさ。それより、明日はクライマックスの演奏シーンだ。歌唱部のみんなもエキストラに来てくれるって言うし、俺たちも力になるから』
『頑張れ~さっくん~!』

『ごめん…みんなの期待に応えられなくて』

『んー…』

『笑えないんだ。動けないんだ。声も…心と体がギクシャクして』
『大丈夫だよ。お前ならきっと』
『これ以上…みんなに迷惑はかけられない』
『朔…』
『それに…元々俺の修学旅行のために始まったことだし。別に、俺が行かなければ…』

『待てよ!今さら修学旅行とかの問題じゃねえよ。確かに、最初はお前のためにって始まったことだけどさ…』

『だから…もう俺なんか』

『そうだよ。お前なんか関係ねぇよ!この曲を、俺たちの曲を!みんなに聴かせたいと思わねぇか!?みんなに届いてこそ、この曲は完成する!だから…そのためにPVを作る。俺たちの曲を完成させようぜ!』

『さっくん~…おなか減った~…』
『あはは…』
『ボルケーノカレー。2つな』

『うん』



「クライマックスシーンだよ!気合い入れていこう!用意!」

「スタート!」

『少しずつ明日へと歩いてさぁ君の夢を叶えに行こう♪』

(はっ…また間違えた。やっぱり…ダメなのか)

「カット!」




『さっくん…』

(ごめん…)


『いつも夢は僕らが描いた未来の自分の理想像で♪』

『僕の夢は叶えられましたか♪昨日の自分が問いかける♪』

『くじけそうなときは思い出して♪』

『涙はいつも希望の架け橋♪』

(そうだ!俺たち3人で、この曲を完成させるんだ!)
『蒼介!』


『詩!』


『大丈夫♪』

『そのままの♪』

『君がイチバン♪』

『僕は大好きだ♪』



『すげぇよ!ぐんぐん再生数が上がっていく!』


『3人が~、ユニットで~、大成功~!』

『配信のほうは?』
『待ってろ』

『おいおい…売り上げが!すげぇ!』

『やったぁー!』
『っしゃぁー!』

『さっくん、カーチャン、僕!』
『ああ!3人で修学旅行行けるな!』
『うん!』

(ありがとう…蒼介、詩!)
『やっぱ朔はすげぇ!』






『久々に2千円札見たよな』

『おいしい!』
『紅いもか…うん、気に入った』

『それにしても…あの海の青さは尋常じゃなかった…素晴らしい』

『俺様はイリオモテヤマネコに会えなかったのが残念だがなぁ…』

「おっ!歌唱部は沖縄に行ってきたんだね」
『駆くんは?』

「北海道!それより陽太、聞いてくれよ!せっかく妹のためにたくさんお土産買ってきたのに」

「どれもいらないなんて言うんだぜ?PVはあんなに喜んでくれたのにさ」

『ハハハ…でもサクタスケのPV、あれからも調子いいみたいだね』

「そうなんだよ!…あ?あの3人は?」



『ただいまーっす』

「おかえり。修学旅行は楽しかった?」

『うん!とっても!』

「よかった…」

『思い出、いっぱいできたよ~!』
「そう!」
『俺の買ったの見てくださいよ!』
「わぁシーサーだ!」

『とにかく海がすごく綺麗でさぁ…!姉さんにも見せたかったよ』


壁の向こうの描写が全く無いの、意図的に見えて怪しいなあ……『修学旅行に行った』という『記憶』だけ植え付けられて帰ってきたんじゃないのお?(闇考察オタクの邪推)
2019/11/10 23:56:26






『困りましたね。何かのコスプレ大会ですか?』
『わっちの名前は…みつせ。吉原の…女』

『目を開けて三毛くん!やだよ!起きて!僕を見てよ!』

つぶやきボタン…
修学旅行は夏休み中の後半にあってどの学年でも好きな場所に行けるのか
毎年行ってもいいのかな?
うたすけからサクタスケになり、大変だったけどPV撮影もできて
3人の曲売れて無事修学旅行にも行けた!
白い壁の外って普通にバスで行けるんだ
ひとまずここまでの半分でひと区切りついた感じだけど、残りの半分はどう展開していくのか…
毎年行ってもいいのかな?
うたすけからサクタスケになり、大変だったけどPV撮影もできて
3人の曲売れて無事修学旅行にも行けた!
白い壁の外って普通にバスで行けるんだ
ひとまずここまでの半分でひと区切りついた感じだけど、残りの半分はどう展開していくのか…
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ACTORS 6話 感想
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コメント…2019年秋アニメについて
-
- 2019年11月12日 21:43
- ID:H2Hdy3Z.0 >>返信コメ
- 一歩進んで二歩下がった感じ
-
- 2019年11月12日 22:35
- ID:HehIUgcs0 >>返信コメ
- バスが入っていく、謎の白い高い壁。
あの外側は霧に包まれ、何もなかったりして。
-
- 2019年11月12日 22:48
- ID:pkm0T5.c0 >>返信コメ
- もう猫を普通に見ることが出来ない・・・。
-
- 2019年11月12日 23:23
- ID:CesBY7U50 >>返信コメ
- ヤマカンは無能
-
- 2019年11月13日 09:22
- ID:L0lgLUMX0 >>返信コメ
- なるほど、外の記憶がなかったら、外があるの?って疑問が出るから、わざと一度は外に出た記憶を持たせるわけね。
そうすれば、わざわざ舞浜(あれの場合)から出ようとは思わないわけだ。
-
- 2019年11月13日 12:18
- ID:2fDM9k7I0 >>返信コメ
- ツイートでも言われてるけど、これ絶対壁の外なんかなくて記憶を植え付けられてるパターンだよね。
2話であれだけ海遊び描写してたのに、今回に限って一枚絵の一つもないのは不自然すぎるし。
ほのぼの風の中に一気にホラー描写いれてくるからかなりぞくっとした。
この緩急のつけ方が癖になるアニメだよなぁ。
次回もサスペンス感ありそうだから早く見たいな。
-
- 2019年11月14日 14:28
- ID:p.eeO8F70 >>返信コメ
- op曲のサビの部分が頭からはなれない
-
- 2019年11月14日 18:30
- ID:Jz1CopL20
>>返信コメ
- 歌唱部よきよき
-
- 2019年11月14日 19:41
- ID:Jz1CopL20
>>返信コメ
- 燎かわいすぎた
…コメントについて…
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