第7話「新しい季節」

「春組!千秋楽公演お疲れ様でしたー!」

「それじゃあ!乾杯の音頭は座長である咲也くん、お願いね!」
『お…オレですか!?』

『よ、座長!』
『乾杯なんて、したこと…』
『早くしろ、咲也』
『早よ早よ』
『スラックスだヨ』
『えーっと…最初は、団員がオレ1人しかいなくて。舞台に立てただけでも嬉しいと思ってました』

『でも…劇団がなくなるかもしれないって言われて。みんなが入ってきてくれて…もっといい芝居がしたい。いい舞台にしたいって、思うようになりました』

『千秋楽は、今までの人生で最高の時間でした。もっと同じ時間を味わいたい。ずっとそこにいたいって思えるような、幸せな時間でした』
『だな』
『俺も』

『まだまだ未熟だけど。これからもよろしくお願いします。もっといい舞台を作っていきましょう』
『イイネ!』
『当たり前』

『では。乾杯!』
『乾杯!』

「うぅ~!まるで昔みたいな…」
「次は夏組の公演だけど、みんなにもサポートしてほしい」

『もちろんダヨ』
『残り3公演、気が抜けないね』

『アンタのためなら、なんでもやる』

「脚本は綴くんに任せるから、よろしくね」
『うっす!』

『団員集めはどうするんですか?』
「チラシに募集も入れたし…それにスカウト枠として声をかけてる子もいるから」
『スカウト枠?』
『誰っすか?』
「それは明日のオーディションでね」




「人、来てくれますかね」
『前回はどうだったんすか?』
「マンツーマンでしたね」
『何も聞かずに、即採用って言われました』
『テキトーすぎる』

一成『こんちはー』
幸『どうも』
いづみ「2人とも来てくれたんだね」
綴『もしかしてスカウト枠って…』
幸『まだやるとは言ってないから。話を聞いてから決めるつもり』
一成『オレはオッケーっすよ。面白そーだし。つづるん、よろー』
綴『そんなんでいいんすか!』

一成『いいのいいの!友達増えそうだしさ!』
真澄『ウザ』
『あのー…』

『でも、役者に興味があるかって言うとそうでもないし…』

「幸くんの衣装は、幸くんが一番似合うと思う。舞台に立ったら、きっと映えるよ」
『たしかに。実際に動いたらどうなるかって、想像しにくいところがあるし』

『あのー…』

『衣装兼役者でいいんじゃね?勉強になるよ』

『じゃあやってみようかな』
『ゆっきー。ロミジュリの衣装、あれマジやばたん。アレンジ効いててちょーかっこいー!』
『このコミュ力高男と同じ組?』

『あの!』
『なに?』
『す…すみません』

『あの…オーディション会場ってここですか?』
『あれ。向坂、オーディション受けるの?』
『え?瑠璃川くん?』

「知り合い?」
『同級生。演劇に興味があるなんて知らなかった』
『う…うん。受けるだけ受けてみようと思って。ボクはきっと不合格だけど』

「人数割れで、全員合格ですけどね」
「じゃあひとまず3人で、オーディションを」

『やっぱボロいなーこの劇場。オーディション会場ってここか?』
「キミも参加希望?」
『そうだけど。アンタは?』
「監督兼主催の、立花です」

『ふぅん』
「えっと…」

『えっ』
『オレこの人、テレビで見たことあります』

『皇天馬だ』

『ちょー有名人じゃん。すっげー!』

『誰?』
『え?』

『あぁん?オレのこと知らないとか。どこの田舎もんだよ』
『ハァ?』

『テンテン!』

『テンテン!?』
『サインちょーだい!』
『サインは別にいいけど』
『イエーイ!友達に配るから、10枚ちょーだい』
『10枚?』
『うん』

「じゃ…じゃあ、オーディションを始めようか」

「どうかした?」
『いや。なんでもない』

「それじゃ、オーディションを始めます」

「名前と演劇の経験を、1人ずつ言ってくれるかな」

『瑠璃川幸、中3。演劇経験はなし』

『オレより年下かよ』

『だから?』
『礼儀がなってねぇ』
『ハァ?』
『はいはーい。次オレね』

『三好一成。大学2年。演劇経験は、なしっす!』

「えーと、次は…」
『は…はい。向坂椋、中学3年です。演劇経験はありません』

『素人ばっかりかよ。こんなんでオーディションになるのか?』
「最後は天馬くん」
『紹介なんて必要ないだろ。さっき言ったし』
「一応お願いできるかな。舞台の経験も聞きたいし」

『皇天馬。高校2年。役者としては15年。舞台経験は…なし』
「なし?一度も?」
『オレ、映画メインだから』

『かーっ!かっけー。テンテンの両親も映画スターだもんね』
『まぁな』

「じゃあ、今から簡単な課題をやってもらうね。おはようってセリフを、起動哀楽の感情で言ってみてくれるかな」

『ここでやるのか』
「え…そうだけど」
『まぁ問題ないか』

「まずは幸くんからね」
『はーい。おはよう。おはよう…おはよう。おはよう!こんな感じ?』

『舞台度胸があるね』

『学生レベルだな』

『ハァ?さっきからいちいち』

「天馬くん私語は控えて」
『フン』

「じゃあ次は一成くん」
『うぃー!おっはよ!お・は・よ!おはよ。いょーう!』

『セリフ変わってるし』

『いい感じネ!』

『今のもアリとかゆるすぎ』

『ウッザ』
『あ?なんか言ったか?』
『別に』

「はい。じゃあ次は椋くん」

『あ…はい。お…おはよう…』

「今のは喜びの表現?」
『す…すみません』
「謝らなくていいよ。自信を持ってやってみて」

『おはよう。おはよう…おはよう…おはよう…』

『ふぅー…』
『あっ…すみません』
「どうしたの?」

『そこのポンコツ役者がタメ息なんてつくからだよ。ほんとウザい』

『おい。ポンコツ役者って誰に向かって』
『ま…待って。全部、ボクの演技が味噌っカスで大根で下手くそだっただけだから』

『そこまで言ってたっけ…』

「次。天馬くん」

『フン』
『あれだけ大口叩くんだから、それなりなんだよね?』

『ふぅー…』

『早くやれ…あ…』



『おはよう』

『おはよう』

『おはよう…』

『おはよう!』

(こなれてるとか…そういうレベルじゃない。長年、経験を積んだ…プロのレベルだ)

『テンテンすげー!』
『やっぱり、本物の役者さんは違いますね』
『当たり前だ』

『普通』
『何だと!?』

「はいはい。課題は以上」

『はぁ?これで終わり?』
『結果は?』
「全員合格」
『はぁー!?』
『全員ってボクも?』

『みんな、合格おめー。LIME、交換しよ』

『ふざけんな。こんなレベル低い奴らと緒にやれって言うのか?』
『自分をどこまで過大評価すんだこのポンコツ役者!』
『さっきからオレのどこがポンコツだって?』
『空気の読めないとこだよ』
『んだと!?』

『ケ、ケンカはダメです』
『みんな、仲良くいこーよ』

『なんだか、真澄くんと綴くんを思い出しますね』
『末はニコイチケンカップルか』
『セット売りでがっぽがっぽダヨ』

『外野うるさい!』

「そこまで。全員合格っていうのは確定。不満があるなら、天馬くんには辞退してもらうしかないけど」
『なっ…オレを外すのかよ』
「このメンバーが嫌ならしょうがないよ?」

『わかった。それでいい』

「ねぇ。天馬くんはどうしてうちのオーディションに来たの?」

『今まで、舞台経験がないから。演技の幅を広げるために、劇団を探してたんだよ。ヒマ潰しにそいつらの公演見たら…ちょっとはマシだなって、思っただけだ』

『ロミジュリ見てくれたんですね、ありがとう!』

『なっ…別に』

「よし。じゃあこれから夏組メンバーとして、みんながんばっていこうね」

『うぃー』

『よろしくお願いします』

『はーい』

『はぁ…しょうがねーな』


『3か月?』
「うん。新生夏組の旗揚げ公演は、3か月後に行います」
『このメンバーで?無理に決まってるだろ』

「それは大丈夫」
『オレたち、全員未経験だったけど…2か月くらいで本番だったから』
『マジかよ』
「そういうことなので。みんなには3か月、みっちりがんばってもらうからね」

『うぃーうぃー!』
『が、がんばります』

『早まったかなぁ』

「それから…団員寮のことなんだけど」
『入る入る!つづるんと一緒~!』
『うわぁ…』

『顔に出しすぎ』

「3人は中高生だから、入寮するなら親御さんの承諾が必要だけど」
『オレはもう話してある。寮も問題ないって』
「そうなの?」
『うちの親、可愛くない子にもとりあえず旅させとけ派だから』

『えー?ゆっきーめっちゃかわいーじゃん。同室になろうよ』

『無理』
『冷たいとこも、かわいーねー!』

『ボ…ボクもできれば寮に入りたいです』
「家が近いなら、稽古場に通いでも問題ないよ」
『いえ。ボクも、寮がいいです。みんなと一緒に、本気でお芝居をがんばってみたいんです』

「わかった。じゃあ親御さんには後で連絡するね」

『はい』

「天馬くんは?」
『オレも寮がいい。許可はもらってる』
「連絡先、聞いてもいい?」
『撮影で海外飛び回ってるから、連絡つかない』
『なんだか真澄の家みたいだな』
「留守電に入れるだけでもいいから」
『わかった』

「寮は2人部屋になってて、夏組は2階の3部屋を分けて使ってもらうことになるんだけど」


『オレは1人部屋以外ありえない』

『2人部屋っつったでしょ?耳遠いわけ?』

『あぁん?』

『ゆっきーには断られたし、むっくん!同室しよ~!』
『ボク?ボクでよければいいよ』
『やったー!今日からルムメ!』

「じゃあ2人は、202号室を使ってくれる?」
『わかりました』
『だったら、あとの2部屋をそれぞれ1人で使うってことでいいよな』
「うん。団員が増えたらまた相談するけど」

『オレ203号室』
『なんで勝手に決めてんの?別に201号室でいいけど』
『だったら文句言うな』
『お前が言うな』

「203号室はまずいです」


「支配人!?」

「実はMANKAIカンパニーには劇団七不思議というものがありまして…」
『七不思議?』
「ええ。誰もいないはずの203号室から、ときおり謎の声が…」

『えっ』

「私も怖くて、近寄らないようにしていたので…掃除は一切していません」

「それも別の意味で怖いです」

『おい。部屋代われ』
『ハァ?まさか怖いの?』
『そんなこと言ってないだろ』
『自分で203号室がいいって言ったんでしょ?』
『気が変わった』
『却下』

『なんだと?お前オレのほうが先輩なんだからな』
『だから?』
『敬え』
『ふざけんな』

『お、落ち着いて』
『とりま、行ってみればいいんじゃない』
「うん。何も異常ないかもしれないし」

『わかった。でも…これで変な声が聞こえてきたら』

『絶対に203号室は使わないからな』
『どんだけワガママなんだよ』


「何か聞こえる?」

『何も』

『あれ…』

『なんだろう』

『今…』

『聞こえました…』
『いわくつきの部屋きた!インステ上げよーっと!』

『やめろ!何か写ったらどうするんだ!』
『すごいビビってんじゃん』

『ま…まぁ。幽霊とは限らないし』

『じゃあ、不審者?』
「そっちも怖いですね」

『わぁー!』
『開けないの?』
『ふざけんな』

「でも…このままだと使えないし。確かめないと」

「わかりました!私が何とかします」
「支配人」

「監督の24時間監視セキュリティ、真澄くんです」

『なに?』
「変な声が聞こえるから、部屋を確認しようと思って」
『俺が開ける。アンタは下がってて』

『気をつけてね』





『わぁー!』
『だ…抱きつくな』

『マジ幽霊きたこれ!』

『おにぎりって神秘~』

『おにぎりオバケ!』
『おい!誰か早く除霊しろ!』

『みんな。三角ほしいの~?』
『おにーさん。どなた~?』

『オレ?斑鳩三角』

「人間?」
『不審者?』
「それは間違いないけど」

『ゴミ?』

『ゴミじゃないよ。オレの宝物』
「キミ、いつから住んでたの?」
『んーと、劇場でなんか始まる前?』
「ロミジュリより前!?」
「全然気づきませんでした!」
『窓開いてたから入れたよ』

『ここ2階だけど』
「というか、この家具はどこから」
「とにかく!不法侵入です!」
『捕まえる』

『おにぎりはダメ』



『すっげー』

『なんて身体能力だ』

『これはオレのだよ』




『え?』
『誰?』

「咲也くん!綴くん!捕まえて!」


『すっげ…』

『いい匂い』
『至さん!』


『無理ゲー』

『ふんふふふん…今日のお夕飯はワタシが握ったおにぎりネ!』
『おにぎり!』

『OH』

『おいしい~』

『やっと追いついた…』
『キミ誰ダヨ』

『オレ、三角』
「三角くん、どうして寮に住んでたの?」
『行くところがないから~』

「さぁ!おまわりさんに電話して」
「三角くん。お芝居に興味ある?」
「監督!?」
『こんなの拾う気?』

『アンタ…正気?』
『ありえねぇ…』

『芝居?知ってるよ』
「やってみない?そうしたら、あの部屋に住んでていいから」
『おにぎり食べられる?』
「うん!」
『じゃあやる』

『どうなっても知らないからね』
『こんなのと一緒にやるのか?』
『よ…よろしくお願いします』
『よくわかんないけど面白そー!すみー!よろ』

『相変わらず節操がない』
『これで、5人揃いましたね』

『夏組血栓ネ!』
『結成な』
『前途多難だけど』

『で、部屋割りはどうするの?』
「天馬くんと三角くんが、203号室かな」
『えっ』

『ねえ、おにぎりもう1個食べていい?』
『夏組のお祝いネ、テッテケドロボーダヨ』
『わ~い!さんかくさんかく~』

『皆さん三角は好きですか~?』
『おい瑠璃川。お前と同室でガマンしてやる』
『ハァ?別にガマンして同室になってくれなくてもいいんだけど』

『おい!待て!オレは201号室で寝るからな』
『勝手に決めるなポンコツ役者』
『あ!?』

(心配なペアだけど…案外、うまくいくんじゃないかな)

『腐った根性叩き直してやるよ!』
『どっちが腐ってんだよ』
『あぁん!?』



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ここから夏組のストーリーに!
春組にも思った以上に出番あっていいね
夏組のメンバーは今までに顔見せしてたけどこうやって集まると賑やかで夏って感じ
相変わらず未経験者ばかりの中、映画でプロとして活動していた天馬は際立ってる
そして初めて姿を見せた三角は別の意味で際立ってる…w
なんだか先が思いやられるけど春組が成功したばかりだし監督としてはいい感触?
春組にも思った以上に出番あっていいね
夏組のメンバーは今までに顔見せしてたけどこうやって集まると賑やかで夏って感じ
相変わらず未経験者ばかりの中、映画でプロとして活動していた天馬は際立ってる
そして初めて姿を見せた三角は別の意味で際立ってる…w
なんだか先が思いやられるけど春組が成功したばかりだし監督としてはいい感触?
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A3! 7話 感想
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ポニーキャニオン (2020-03-04)
A3ders![佐久間咲也、皇天馬、摂津万里、月岡紬(CV:酒井広大、江口拓也、沢城千春、田丸篤志)]
ポニーキャニオン (2020-02-05)
ポニーキャニオン (2020-02-05)
春組/夏組
ポニーキャニオン (2020-03-04)
ポニーキャニオン (2020-03-04)
コメント…2020年春アニメについて
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- 2020年05月22日 23:42
- ID:SbROhfiH0 >>返信コメ
- キモいBLアニメで一番乗りなりたくね~!!
-
- 2020年05月23日 00:15
- ID:YyKgbU6.0 >>返信コメ
- 部屋割りだけど幸とむっくんが一緒の方が良くない?同じ学校だし性格合いそうだし。
春組ってしばらく舞台ないの?至またゲーム三昧になりそう。
春組の打ち上げの時の料理ってお店の?
監督はカレー以外も作れるらしいな。ただし、ちゃんと言わないとカレー味になってしまう。
-
- 2020年05月23日 02:18
- ID:jENaTL7y0 >>返信コメ
- なんか作画が微妙になっているようなって思うのは私だけ?
-
- 2020年05月23日 02:44
- ID:ITng.JZg0 >>返信コメ
- おにぎりの男、普通に怖いんですけど…
頭、大丈夫?
-
- 2020年05月23日 14:42
- ID:8U3DUXYa0 >>返信コメ
- 幸と天馬の二人が好きすぎるんだよなあ
-
- 2020年05月23日 15:35
- ID:uZ47Af.U0 >>返信コメ
- あらあら皆さん可愛らしい・・・ブゥドゥ人形みたいだわ!!
-
- 2020年05月24日 22:47
- ID:JyLWhvQv0 >>返信コメ
- 夏組良き
-
- 2020年05月25日 03:33
- ID:74RL4dA60 >>返信コメ
- 夏組スタートですね👍️今後楽しみでず♡
-
- 2020年05月25日 08:30
- ID:mtTcIV600 >>返信コメ
- やっぱアニメだとゲーム以上に掛け合いとかもそうだし演技の幅めちゃくちゃ観れて楽しいっすね、夏の公演もアニメでどう演出されるか楽しみ
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- 2020年05月26日 21:05
- ID:ko7awtMn0 >>返信コメ
- 面白いんだけど引きの絵少ないのが気になった
…コメントについて…
※お気軽に、どなたでも書き込みOKです。
※「>>〇」「※〇」のようにコメント番号を指定することでアンカーの指定が可能です。
※コメントの書き込みが出来ない等の不具合報告やコメント削除依頼は、コチラより一言頂けると有難いです。
※お気軽に、どなたでも書き込みOKです。
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