第9話「はじまりの夏合宿」
『暑い…ほんといい迷惑なんだけど』
『いーじゃん!みんなで思い出作ろうよ』

『わぁ~…見て!さんかく~!』
『イイネ!写真撮ろ~!』

「それじゃあ、行ってくるね」
「私がいなくなっても寮の事は大丈夫でしょうか…」

『はい!任せてください』
『あんまり普段と変わらないすけど』

『俺も一緒に行く』

『えっ!?』
「夏組の稽古だから行けません」
『じゃあ夏組になる』
『真澄くん!春組はどうするの!?』

『大体、なんでアンタは行けるんだ』
「私ですか?私はもちろん!雑用係です」
『元気よくパシリ宣言しちゃった』

『俺もそれやる』
『ほら、わがまま言うな』
『離せ綴』
『これは捕まえとくから、行ってらっしゃい』
『皆さん。がんばってください』


『天馬くん。もうまくいくといいね』

『ああ』


「さぁ!着きましたよー!」
「みんなお疲れ」
『ここが合宿所か』
『いかにもって感じ』
『なんだか、部活の合宿を思い出すな』
『さんかく屋根~』

『レトロでいーじゃん!インステあげよーっと。ゆっきーたちも!一緒に撮ろー!』
『撮影不可』
『えぇ~?』
『ぐずぐずするな。さっさと行くぞ』
『はいはーい』

『なんでそんなにやる気満々なわけ?』

『行こう、幸くん』

『教えてくれシェヘラザード。幻の楽園、オアシスはどこにあるんだ』
『では、今宵も語りましょう。むかしむかし、とある国に』
『前置きが長い。3行で』
『アラジン、魔法のランプ、魔法使い!』
『行ってくる!』

『気をつけてね。アリババ』

「幸くん。今の…」

『おい。ここのシェヘラザードはそんな能天気じゃない』
『はぁ?…あぁ、王様からハーレムに入れって言われてるからか』
『そうだ。それが明らかになるのは終盤だが、役者はそれを踏まえて演技しろ』
『はいはい』


『気をつけてね、アリババ。アンタ、昔から人の話をちゃんと聞かないっていう致命的な欠点があるから』

『そこも、アリババに対する気持ちがこもってない。感覚的にやるな』

『わかってるよ』

『あっ。あの子もマジかわいい』

『ねえねえ!オレと遊びに行かない?』
『そこはもっとテンション上げる』
『え?そうなの?』
『未来の嫁なんだから、他の子をナンパする時より変化させろ』

『ふぅん?そういうもんなんだ。オケオケー!』

『大人になりなよ、アリババ。幻のがくえ…』

『楽園』
『ごめんなさい』

『大人に…大人になれよ、アリババ。幻の…楽園なんてないんだよ…』

『幻の楽園だろ?幻なんだから存在するわけないじゃん。いい加減現実を』

『あー!』
『どうした?』


『あの雲、さんかく!』

『今稽古中だろ!芝居に集中しろ!』
『さんかくいっぱーい』
「ちょっと休憩にしようか」

『ってか、シェヘラザードってなんで千夜一夜物語なんて始めたんだっけ』
『なんか、そーいう仕事?』
『違うだろ』
『おむすびもらったお礼かな~』
『絶対違う』
『んー。つづるんいないから、わかんないよね』

『この脚本はアラビアンナイトをアレンジしてるから…違うかもしれないけど』

『原典なら。王様が、毎晩夜を共にした女性を処刑してたんだ。それをやめさせるために、王に嫁いで物語を聞かせるんだよ。夜毎、物語の佳境まで話して…続きはまた明日と約束することで、自分を処刑するのをやめさせるんだ』

『むっくんくわしい!』
『一応、全巻読んでみたから』
『全巻!?あれちょー長いじゃん』

『図書館で借りて…少し、大人なお話もあったりしたけど。面白かったから、あっという間に読み終わったよ』

『むく…』
『え』

『えらいからスーパーさんかくクン進呈~!』
『なんですか?これ』

『かわいい~!え、うん。かわいい』
『無理すんな』

『王冠がついてるからスーパーだよ~』
『消しゴムからグレードアップした。ありがとうございます』

『おい。役作りのために読んだのか?』
『うん。もっと、千夜一夜の世界を理解したくて』
『まあ…努力は認める』

『ありがとう!』

『ふーん。女の人を殺す王様か。それなら絶対嫁ぎたくないよね』

『シェヘラザードの心情もわかるだろう?お前も少しは見習え』

『うるさいなぁ』

『衣装の参考にしたいし、後で内容教えて』

『もちろん』

「お疲れ様でしたー!」
『はらへりぺこりんこー』
『おにぎりおにぎりー』

『夕飯はどうするんだ?』
『親睦を深めるために、みんなで作ります』
『えぇ~!?』
『合宿所にはコックもいないのか』

「私でよければ」
「却下」

「心配しなくても。今夜のメニューは、人類みんなが大好きな本格派カレーだから!」

『またか!』
『カレー星人再来』
『で…でもホラ、監督さんのカレーおいしいし』

『まね。おいしいのはわかる』
『おにぎりあるならいいよ~』

『このスパイスはね。なんとインドから直輸入した』

『はいはい。オレご飯係』
『スイッチ入れるだけだろ』

『野菜洗ったほうがいいかな』
『レシピ、ググっちゃお!』
『オレはおにぎり係』

『おい。米はもっとちゃんととげ』
『芝以外でも細かい』
『当たり前のことを言ってるだけだ。それに、米の品種は何だ。オレはピカリン米しか食べないって決めてる』

『わがまますぎ』

『お前ががさつすぎんだよ』
『お…落ち着いて。このお米もおいしいよ』
『大根役者は黙ってろ!』

『あ…大根…大根も、おいしいよ…』

『おにぎりにしたらなんでもおいしいよ~』
『それはお前が変人だからだ』
『え~』

『はぁ…』
『あ?なんだよそのため息は』
『アンタがいると空気悪くなる』
『オレのせいかよ!そもそもお前がちゃんと米をとがないから!』
『人のせいにしないでよ』
『なんだとー!?』

『こーらテンテン!そんなにかわいくないこと言うと、友達いなくなっちゃうよ~?』

『なっ…お前みたいに誰にでもいい顔してまで、うすっぺらいオトモダチ作ろうとか思わない!』


『えっと…アハハ』

『言っていいことと悪い事もわかんないの?』

『天馬くん!』
『ほっとけば』


「あ、いた」

『ん?なんだよ』
「はい。すっごく美味しくできたの」

「奇跡の出来。みんなはもう食べたよ」
『いらない』

「このあたり何もないでしょう?食べないと稽古で力が出ないよ」

『うまい…』

「でしょ!?みんなにも好評だったんだ。幸くんなんてスーパーカレー星人って呼んでくれて~」
『なんでそのあだ名で喜んでんだよ』

「ねえ。明日はみんなで一緒に食べよ?天馬くんなりに、リーダーとしてみんなのことちゃんと見てるって伝わってるよ。おかげで、少しずつ役の理解も深まったし。芝居が上手くなってきたと思わない?」
『まだまだだろ』
「え?」

『瑠璃川は器用な分セリフを流しがちになる。でも…動きに華がある。自分の魅せ方を知ってるから、舞台で映える』

「うん」

『三好は…いい意味でも悪い意味でも適当だ。人に合わせるのは上手いけど、押しが弱い。でも…どんな相手でも合わせられる柔軟さがある』

『向坂は、下手くそだが努力家だ。役のことをよく考えて園児用としてる。緊張しすぎるところを直せば、化ける可能性がある』

『斑鳩の実力は本物だ。真面目にやれば、オレと張るくらいの演技力を持ってる。それなのにヘラヘラしてるところが、どうしようもない』

「フフッ」
『何だよ?』
「やっぱり天馬くんをリーダーにして良かったなって実感してたところ」

「明日はちゃんとみんなに謝って。今まで通りみんなの欠点は指摘して、それと同じくらい出来たところはほめてあげて。役者として大先輩なんだから、それくらい出来るでしょ?」


『誰に向かって言ってんだ。オレはいつか、世界各国の主演男優賞を総ナメにする男だぞ。演技指導なんて余裕だ』

「あははっ!そうだね」

『笑うとこじゃない』
「ごめんごめん。頼りにしてるよ、リーダー」

『フン。しょうがないな』

『ん』
『あ…天馬くん』

『お…おはよう』

『おう』
『おはよー』

『おはよ』

『今日はさんかくゼロの日だ~』

『空気がどよ~ん。オレもどよ~ん』

「みんなおはよう!それじゃあ準備体操から」



『オッケ。ストレッチね』

『おい!』

『どしたの?』

『それって、誰を呼んでんの』

『全員だ。その…昨日のことは、何というか…』

『何』

『だから…つまり…昨日は言いすぎたと思ってる!』

『え?』

『以上!』

『はあ!?他にも言うことは?』

『以上だ。さっさとストレッチしろ!』

『なんで素直にごめんなさいが言えないの』
『きっと、天馬くんなりの精一杯なんだよ』

『テンテン耳赤くなってる~』
『さんかくあげるね』

『オアシスが見つからなかったら…どうなるんだ』
『ここまで引き延ばしたけど、もうどうしようもないし。王のハーレムに入るしかないわ』
『今のは、もう少し感情を抑えた方がいい』

『はいはい』
『でもその仕草は良かった』
『えっ』

『なんだよ』

『テンテンがほめた!』
『確かに、すごく心情が伝わった芝居だったよ』
『ほめるとか気持ち悪っ。鳥肌立つよ』

『なんだと!?』

『幸くんも、素直にうれしいって言えばいいのに』
『別に…うれしくないし』

『ゆき、素直じゃない~』

『大人になりなよ、アリババ。幻の楽園なんてないんだよ。一発逆転で億万長者になんかなれないんだって。真面目に働け』

『そこはもっとためたほうが伝わる』
『あぁ…ごめん』

『だが、表現の仕方はいい』

『う、うん。ありがとう』

『今の感じで抑揚を忘れるな。それから、身振りをつけたほうがより気持ちを出せるようになる』
『うん、やってみる』

「皆さーん、お昼ご飯ができましたよ」

「えっ」
『支配人の料理って、食べたことないな』

『カレーじゃないことを祈る』
『なんだろう』

『おにぎり』
『すみー安定』

『まさかの…』

『カレーうどん』
「昨日のカレーを再利用したので、味は保証付きです!」
『ま、まぁ。いいんじゃないかな』

『おにぎりがない…絶望~』

『すみー。じゃがいも三角!』
『ほんとだ。さんかくさんかく』

『ねえ』
「んっ?」

『この後、全部カレー味にする気じゃないよね』
「それは後のお楽しみ」
『1ミリも期待できない』

「それより幸くん。午前中の稽古、すごく良くなってたね」
『ハァ…アンタのその得意気な顔がほんとムカつく。ポンコツリーダーに何吹き込んだのか知らないけどさ』

「アハハハ…」

『悔しいけど…あいつの指摘って正しいんだよね。演技に関しては』

「え?」
『なんでもない』

『はぁ~今日も疲れた~』

「みなさん!お疲れさまです!今日はアクティビティを用意しましたよ!」

『アクティビティ?』

「夏といえば花火!合宿は思い出作りも大切です!」

『確かに、いいですね』

『これが花火?』

『よいしょ』

『いえー!ロケット花火ー!』
『何だ?それ』
『天馬くん、ロケット花火やったことないの?』

『ドラマの撮影で線香花火はやったことがある』
『おえ…一瞬にしてリア充映像が浮かんだ』
『同級生役の女優と、ゆかたの衣装着て』
『詳細に言わなくていい』

『わぁ~。少女マンガのワンシーンみたいだね。憧れちゃうなぁ~』

『そうか?線香花火はチマチマしててあまり面白くなかった』

『テンテン。ロケット花火はね~。ドカーン!って、爆発しちゃうんだよ~ん!』
『何!?』

『そうそう。それで中から爆竹が飛び出して、頭の上に降ってくんの』
『危険極まりないじゃないか!』

『爆竹警報~、爆竹警報~』

『ちょ…ちょっとみんな』

『それじゃ、点火するよ。3ー!2ー!1ー!』

『ま…待て!まだヘルメットの準備が!』
『ゴー!』

『危ない!』


『はぁ…』
『え?』

『ぷっ』
『ごめんご。爆発ってのは冗談でした』

『信じるとか…あははは』
『なっ!お前ら…』

『ごめんごめん』

『ははははははは』

『三好』

『昨日のこと、悪かった。すまん』

『え?』
『やっと?ハァ、これだから天馬様は』

『テンテン。全然気にしてないって。それに、さっきのでおあいこ!』
『ねえねえ、何の話~?』
『じゃあ、仲直りの記念に!』

『たーまやー!』

『まったく…普通の花火じゃないか』
『あたり前じゃん』

『さ、どんどんやってくよー!』




『きれいなさんかく~』

『すみー天才!インステ上げていー?』

『なんだか、修学旅行みたいだね』

『おー。そんな感じかもな。オレ行ったことねーけど』
『えっ?そーなの?』
『芸能活動が忙しくて、学校行事はオールキャンセルだった』

『へぇー。さすが売れっ子』
『ちょっと寂しいね』
『オレも行ったことない。旅行費?みたいなの出なかったし』
『三角って…前から寮に住みついてたみたいだけど、家帰ってんの?』

『ううん~。全然~』

『じゃっ。テンテンとすみーは行けなかった分、思い出いっぱい作ろうね!』
『待て』
『オレら友達ちゃんだしさ。修学旅行みたいなもんでしょ』
『かず、てんま、友達~』

『オレは別に。同じ劇団っていうだけで、まだ友達とかじゃ…』

『じゃーん。親愛の証に一発!』
『あ、ねずみ花火』

『なんだそれ』
『足元でバチバチ火花を散らしながら縦横無尽に攻撃していく花火』
『フン!また大げさに言ってるんだろ』

『今回は特別に…10個つけちゃう』

『えぇっ?』
『やばっ、退避!』

『もう騙されないからな』

『3!2!1!それー!』


『ん?』

『ギャーッ!』
『だから言ったのに』

『危ないだろ!なんだこれ!』

『はははははは…』

『きれ~』






つぶやきボタン…
春組は舞台の上で寝たけど、夏組は合宿へ!確かに夏って感じする
やっぱり真澄も一緒に行きたがるかw
一成はああ見えて過去に何かあった…?
リーダーとしてそれぞれのいいところをちゃんと見てた天馬、みんなと仲良くなれそうになってきたね
花火を用意してくれた支配人もたまにはいいことしてくれる!
やっぱり真澄も一緒に行きたがるかw
一成はああ見えて過去に何かあった…?
リーダーとしてそれぞれのいいところをちゃんと見てた天馬、みんなと仲良くなれそうになってきたね
花火を用意してくれた支配人もたまにはいいことしてくれる!
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A3! 9話 感想
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コメント…2020年春アニメについて
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- 2020年06月08日 09:25
- ID:ZDV5ZESb0 >>返信コメ
- 変人な三角に対しても人当たりのいい一成、やっぱ好感度高いな
可愛い系が2人いるのもいい
監督もいい
-
- 2020年06月08日 09:55
- ID:OvdMIzfj0 >>返信コメ
- A3って人気のアプリなのに、なぜかコメントが少ない
-
- 2020年06月08日 13:34
- ID:7CRt2EBt0 >>返信コメ
- 子役だけで引退したとかならあのキャラでもそれほど違和感ないけど
ガッツリ現場に出てるのにただ素人バカにして現場荒らすような流れは
さすがに違和感強くてこういう展開やりたいためだけのキャラ付けに見えてしまう
-
- 2020年06月08日 20:29
- ID:xDFJqzhP0 >>返信コメ
- 私だって!私だって!ローカルアイドルになって!有田焼を全世界に宣伝するのが夢だったんだ!?
-
- 2020年06月09日 00:46
- ID:OrH.XSia0 >>返信コメ
- 作画が崩れたり崩れなかったり・・・
安定してないから、見ていて疲れる。
延期までしたのに、勿体無い感じ。
まだ、漫画版のほうが絵が崩れてない分、感情移入できた
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- 2020年06月09日 13:09
- ID:T7oTEhGa0 >>返信コメ
- こんなゴミコンテンツ早く打ち切れ
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- 2020年06月09日 17:13
- ID:zHp7sGwg0 >>返信コメ
- 次の話見たけど本当に展開のためにキャラ動かしてる感が強い
-
- 2020年06月10日 19:11
- ID:4SHgoPmN0 >>返信コメ
- 願掛け
ここのコメントが6月12日までに二桁行かなかったら手術は成功する!!
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- 2020年06月11日 14:09
- ID:k3rQuD8N0 >>返信コメ
- 全員あざといですね
…コメントについて…
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旅行費出ないって相当だよな。やばい家族なのか?